「本社の戦略」と「現地の現実」のズレを、2週間で可視化する――オンライン英語インタビュー支援の実際
海外拠点のキーパーソン4名への英語インタビューから、日本語レポートまで一気通貫。グローバル経営の「見えない溝」に向き合うための現場レポートです。
「海外拠点の責任者たちは、本社の方針をどう受け止めているのか」――そう問いかけたとき、正直に答えられる担当者はどれだけいるでしょうか。本社から見えているのは、数字と報告書だけ。現地の責任者が何を感じ、どんな課題を抱え、本社に何を求めているかは、通常の業務ラインではなかなか見えてきません。本記事では、ある商社グループの事例をもとに、オンライン英語インタビューを活用した「認識ギャップの可視化」プロジェクトの全体像をご紹介します。
きっかけは「なんとなくかみ合っていない」という感覚だった
依頼をいただいたのは、複数の海外拠点を持つ商社グループの経営企画部門でした。グローバルな事業展開を加速する方針のもと、本社では新たな事業戦略を策定し、各拠点に共有していました。報告ベースでは「問題なし」の回答が返ってくる。しかし何かが引っかかる。
「戦略への反応が薄い」「現地からのアイデアや提案が来ない」「会議でYESと言うが、その後動きが変わらない」――こうした感覚が、本社側の複数の担当者の間で共有されていました。しかしそれを確認する手段がなかった。出張で直接話すにしても、限られた時間の中では表面的な会話に終わりがちです。
① 本社が「共有した」と思っている方針が、現地では「指示された」と受け取られている
② 現地が感じているボトルネックを、本社の報告ルートに乗せにくい空気がある
③ 英語での公式コミュニケーションでは、本音・ニュアンス・感情が削ぎ落とされる
④ 現地責任者のモチベーションや離職リスクを、本社が把握できていない
プロジェクト概要:2週間・4名・英語で聴く
今回のプロジェクトの枠組みは、以下のように設計されました。
| 対象者 | 海外拠点の責任者およびキーパーソン 計4名(複数拠点・複数国) |
|---|---|
| 形式 | オンラインインタビュー(1名あたり約60分) |
| 言語 | 英語で実施 → 日本語レポートとして整理・提出 |
| 期間 | 約2週間(設計〜実施〜分析・報告まで) |
| 目的 | 本社戦略への認識ギャップの把握・現地の課題感・期待の言語化 |
4名という人数について、「少なすぎないか」という声をいただくことがあります。しかしこのプロジェクトの目的は、統計的な傾向を把握することではなく、組織のキーパーソンが何を感じ・何を考えているかを深く聴くことでした。1名あたり60分という時間をかけた半構造化インタビューは、アンケートや短時間のヒアリングでは引き出せないレベルの情報を得ることができます。
設計フェーズ:「何を聴くか」より「なぜ聴くか」を先に決める
プロジェクト開始後、まず行ったのは本社側の担当者との設計ミーティングです。「インタビューで何を聞けばいいですか?」という問いに対して、K'sインターナショナルがまず確認するのは「このプロジェクトを通じて、何を経営判断に活かしたいのか」という問いです。
インタビュー設計で整理した3つの問い
- 現地責任者は、本社の戦略をどのように理解・解釈しているか:「共有された」と「理解された」は異なります。どのような文脈で受け取っているかを探ることで、認識のズレが生まれているポイントを特定します。
- 現地で感じている最大の課題・障壁は何か:本社へのレポートには上がりにくい「現場のリアル」を引き出します。リソース・権限・文化摩擦・情報の非対称性など、現地固有の文脈から課題を掘り下げます。
- 本社に対して何を期待しているか、あるいは期待していないか:「期待していない」という声は、すでに諦めが生まれているサインである場合があります。期待と失望の構造を把握することで、関係性の現状を診断します。
事前に設計した問いの枠組みを持ちながらも、回答の流れに応じて深掘りの方向を柔軟に変えるインタビュー形式です。アンケートや構造化インタビューと異なり、「想定外の回答」「言葉の裏にある感情」「語らなかったこと」に注目することができます。定性的なインサイトを得るために最も有効な手法の一つとされています。
英語インタビューの現場:言語の壁は「英語力」だけではない
今回の対象者は、いずれも英語でのビジネスコミュニケーションに慣れた海外拠点の責任者・キーパーソンです。しかし「英語で話せる」ことと、「英語で本音を話せる」ことは別の問題です。
特に、「本社への批判や懸念」「自分のモチベーションや将来への不安」「組織内の人間関係」といったセンシティブなテーマは、言語の習熟度に関わらず、語りにくい内容です。インタビュアーの役割は、単に質問を投げかけることではなく、「ここでは安心して話せる」という場の空気を作ることです。
インタビューが始まった直後は、どこか「答え合わせ」をしているような印象がありました。しかし30分を過ぎたあたりから、明らかにトーンが変わった。「実はずっと感じていたことがある」と話してくれた瞬間が、今回のプロジェクトで最も印象的な場面のひとつでした。
――担当インタビュアーより
また、英語で行われたインタビューの内容を、そのまま本社の日本語話者に届けるためには、単純な「翻訳」では不十分です。発言のトーン・文脈・含意を保持しながら、日本語で読み手が正確に理解できる形に再構成することが求められます。これは翻訳と分析の中間にある、専門的な作業です。
2週間のプロセス全体像
- DAY 1–3 / 設計フェーズ目的の明確化・インタビュー設計・対象者調整
本社担当者とのキックオフMTGを経て、インタビューの目的・問いの設計・対象者リストの確定を行います。インタビュー実施に向けた日程調整と事前情報収集もこのフェーズで完了させます。
- DAY 4–10 / 実施フェーズオンラインインタビュー実施(計4名・各60分)
時差を考慮したスケジュールで、複数国の対象者にオンラインで実施。録音・ノートを活用し、発言の記録と並行して深掘りポイントを判断しながら進行します。
- DAY 11–13 / 分析フェーズ発言の構造化・テーマ抽出・クロス分析
4名の発言を横断的に分析し、共通パターン・対立する認識・個別固有の文脈を分類します。本社への提言につなげるインサイトを抽出する段階です。
- DAY 14 / 報告フェーズ日本語インサイトレポート提出・報告MTG
経営陣・担当者向けの日本語レポートを提出。必要に応じて報告MTGを設け、レポートの読み解き方・次のアクションについての対話を行います。
見えてきたズレ:3つの構造的なパターン
守秘義務の観点から、個別の発言内容や企業・拠点の詳細はお伝えできません。しかしこのプロジェクトを通じて、グローバル組織に共通する構造的なパターンが浮かび上がりました。
① 「戦略の意図」ではなく「戦略の指示」として受け取られていた
本社が「一緒に作っていくビジョン」として提示した方針が、現地では「本社からの新しい管理方針」として受け取られていたケースがありました。言葉は届いていても、「なぜこの方向か」という背景が共有されていないために、現地の主体性が引き出せていませんでした。戦略の「What」は伝わっても、「Why」が伝わっていない――これはグローバル組織に非常によくある断絶です。
② 「問題がある」とわかっているのに、報告ルートに乗せられない
現地責任者が感じている課題の中には、「本社に言っても動いてもらえないと思っている」「指摘することで評価が下がる気がする」という心理的なブロックによって、報告されないままになっているものがありました。外部の第三者が匿名性のある形でヒアリングすることで、初めて言語化された課題がいくつもありました。
③ キーパーソンの「もう少しで離れる」サインが見えた
4名のうち、複数名において、現職への閉塞感・将来のキャリアへの不安が語られました。表面的には安定しているように見えた拠点の責任者が、内心では次のステップを検討し始めているというリスクは、本社側には全く届いていませんでした。こうしたリテンションリスクの早期検知も、インタビュー調査が果たせる重要な機能のひとつです。
- 戦略の「What」は伝わっていたが、「Why」の共有が不十分だったことが現地の受動性につながっていた
- 現地固有の課題が、報告ルートに乗らないまま蓄積していた
- 複数のキーパーソンで、モチベーション低下・離職リスクの兆候が確認された
- 拠点によって、本社への信頼度・期待感に顕著な温度差があった
日本語レポートの役割:翻訳ではなく「経営言語への変換」
インタビュー後に提出した日本語インサイトレポートは、単に英語の発言を日本語に訳したものではありません。経営陣が読んで、判断・行動につなげられる形に再構成することが私たちの仕事です。
具体的には、4名の発言を横断的に分析し、発言の背後にある文脈・感情・組織的なパターンを抽出した上で、「本社としてどう対応すべきか」という視点で整理しています。担当者がレポートを読んで「現地のキーパーソンが何を感じているか」を立体的に理解できること、そして経営会議で議論の材料として使えることを常に意識しています。
K'sインターナショナルのインタビュー支援は、英語と日本語の両方に精通したインタビュアーが担当します。英語での会話の中で生まれるニュアンス・トーンの変化・語られなかった部分まで含めて、日本語を母語とする経営陣が正確に理解できるレポートに仕上げることが私たちの強みです。「通訳」でも「翻訳」でもない、グローバル組織のインサイト変換をご提供しています。
まとめ:「現地の声」を経営に届ける仕組みを持っていますか
グローバル組織における「本社と現地のギャップ」は、多くの企業が抱えながら、見えにくいまま放置されがちな課題です。定期報告・KPI・出張面談だけでは掬えない声が、必ずあります。
オンライン英語インタビューという形式は、移動コストを最小化しながら、複数国のキーパーソンから深い情報を得るための現実的かつ効果的な手段です。外部の第三者が介在することで、現地の本音が引き出しやすくなり、英語から日本語への高精度な変換によって、本社の経営陣がそのまま意思決定に活用できる情報となります。
- 海外拠点の責任者が何を感じているか、定期的に把握できていない
- 現地からの報告と、実態の間にズレがある気がしている
- 英語でのコミュニケーションが本音の共有を妨げている可能性がある
- キーパーソンのリテンションリスクを把握したい
- グローバル戦略の浸透度を現場の声から確認したい
ひとつでも思い当たる節があれば、ぜひ一度ご相談ください。どのような規模・形式のインタビューが御社の課題に適しているか、無料でご相談を承ります。
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